トライアスリート・トレーニング・バイブル(前編)

“トライアスリート・トレーニング・バイブル”

トライアスロンの本はいくつも読んできましたが、これを超える本に出会ったことはありません。

トレーニング方法から、計画、戦略、体調管理、メンタルの強さまで、トライアスロンの競技力向上に関わるあらゆる要素が網羅されています。

まったくの素人だった自分のトライアスロンの知識を一気に引き上げてくれたのがこの本です。

初心者からエリートまで、老若男女すべてのトライアスリートに知っておいてほしい内容です。

  1. 本の概要
  2. 練習強度の考え方
  3. ピリオダイゼーションの考え方
  4. 競技のテクニック(後編)
  5. 食事(後編)

 

後編はこちら

 

1. 本の概要

トレーニングバイブルという名前から、ずいぶんな自信を感じます。

しかしこの本、その名に恥じず全596ページにわたる大作です。

最初手に取った印象は「広辞苑みたい」でした。

以下の6つのパートで構成されています。

 

  1. セルフコーチングのアスリート
    • トレーニングや競技に対する心構えについて。
    • 目標を設定して、それに合うような生活をしましょう、という話。
  2. 理論から実践へ
    • トレーニング強度と疲労について。
    • 練習の頻度、時間、強度をコントロールしましょう、という話。
  3. 目的のあるトレーニング
    • 体力の評価と課題発見について。
    • 自分のパワーを把握して、課題を絞って練習しましょう、という話。
  4. プランニング
    • レース別トレーニング計画について。
    • 目標に合わせた年間、週間トレーニング計画を立てましょう、という話。
  5. レースと回復
    • レース前の回復について。
    • レース約2週間前からコンディンションをピークに持っていく過ごし方をしましょう、という話。
  6. 競技力の向上
    • 種目別テクニックと練習メニューについて。
    • 正しいフォームを磨き、適切に筋力をつけましょう、という話。

 

何も知らなかった自分にとって、どれもこれも新鮮な情報でした。

また、説明に対して裏づけデータが載っており、読んでいて納得感があります。

専門書っぽいのに読んでいて気分が高まります。

よくあるトレーニング本では、”6. 競技力の向上” に重きが置かれるのですが、

心構えや長期計画から勉強できたのは大きな収穫でした。

特に他競技からの転向組は、まずここを知るべきかと思います。

僕はハンドボールの経験があったのですが、

「低負荷の練習をメインで組む」

のような持久系競技の常識をまったく知りませんでした。

 

2. 練習強度の考え方

本書を読んで、一番意識して変えていかなければならないと感じたのは練習強度についてです。

ランひとつ取っても練習の強度は様々です。

ジョギング、100m走、坂ダッシュ、1000m走、5000m走、10000m走、さらに長距離など

これらをどのような比率でどのくらいの頻度で練習すると一番記録が伸びるのでしょうか。

 

本書を読むまでは漠然と、強い練習をたくさんこなすほど良い、という考えでした。

これまでハンドボールをしていた自分にとって、フットワークやシュート、ゲーム形式の練習であえて強度を落とすようなことはなかったからです。

「とりあえず必要な練習を選んで全部全力でやればいいのでは?」

と思っていました。

しかしそれは比べる対象が違いました。

 

ランのトレーニングを全てスピード練習でこなすことは、ハンドボールで言うと、

「今から2時間シュート練習だけ。全部全力ね。あ、これ1ヶ月間毎日やるから。」

と言われるようなものです。3日目くらいに肩壊れると思います。

(マイナー競技との比較ですみません。。)

 

しかし僕と同じように、練習をたくさんこなすべき、と考える方は多いようです。

本書では繰り返し、トライアスリートはオーバーワークに陥りがちであることを指摘しています。

 

選手の多くはトレーニングで自分を追い込み過ぎています。こうしたことから、トライアスロンでは怪我、オーバートレーニング、病気、燃え尽きが当たり前になってしまっているのです。

やろうと思えばもっとできる、と感じるぐらいで練習を終えるようにしましょう。必死に頑張らないとインターバルの最後の1本がこなせない、というときは、その1本を走ってはいけないのです。

 

トライアスロンでは3種目を継続的に練習し、それぞれにパフォーマンスを伸ばしていく必要があります。

トレーニング → 回復 → トレーニング → 回復

のサイクルを無理なく回していかないと、継続的に練習することができません。

強度の高い練習ばかりやっていると、身体の回復が追い付かず、怪我してしまうか、十分な強度を出せないまま練習を終えることになってしまいます。

練習するほど良い、という根性論では記録は伸びないのです。

 

この常識は自分には衝撃的でした。そして、

「練習しすぎもよくないのであれば、いつまで経っても強度の高い練習に取り組めないのでは」

という疑問も湧いてきました。

それには練習のメリハリをつけることが大切でした。

 

セルフコーチングをする選手のなかには、練習を休んだり自分の進度に焦りを覚えたりすると、その遅れを取り戻そうと、回復期間の練習をきつくする人がよくいます。これでは疲労が増し、ハードトレーニングの質を落とすだけです。これを解決するには、ハードトレーニングの日の練習をさらにきつくし、イージートレーニングの日の練習をさらに軽くすることです。

 

弱い練習と強い練習を意識的に分ける。

持久系競技の経験がある方には何の違和感もないかもしれませんが、当時の自分には大きな驚きでした。

 

写真はオリンピックディスタンスに向けてトレーニングする場合の、強度(心拍数)ごとの練習量目安です。

 

 

ゾーン5(最高強度、ランでいう1000mインターバルなど)の練習は10%未満です。

ゾーン1(最低強度、ランでいうジョギングなど)の練習が約40%で、

正直、まったく逆の配分が適切だろうと思っていました。

 

3. ピリオダイゼーションの考え方

トライアスロンのシーズンは夏です。

(夏が終わって寂しい今日この頃。。)

そのため夏にパフォーマンスのピークを持ってくることが得策です。

すると、季節ごとに取り組むべきトレーニングが異なってきます。

この考え方をピリオダイゼーションといいます。

僕はそんな言葉聞いたこともありませんでした。

 

写真のように、いつどのような体力づくりをするのか分けて考えます。

 

 

これはレースにピークを持っていくためのピリオダイゼーションの一例です。

 

~レース8週間前(基礎期間):テクニック、筋力、持久力の基礎固め

~レース2週間前(強化期間):弱点の強化、最大運動強度の向上

~レース当日(調整期間):回復、維持

レース当日:本番!

準備、移行はレースを終えてから次のレースに向かうときの回復期間です。

 

このように、当日のパフォーマンスを最大化するために数ヶ月前からトレーニングの質、量を調整します。

修行して、実践練習して、本番前はよく休む、ということですね。

 

部活動の頃でも冬は走りこみ、といったことはしていましたが、

改めてこのように意識して練習の期間分けをすることが新鮮でした。

「何気なく経験上やってきたことにも、ひとつひとつちゃんと理論があるのだなあ」

と読みながら感心してしまいました。

 

がむしゃらに練習に取り組むのと、ピリオダイゼーションを取り入れるのと、

どちらが当日のパフォーマンスが高いかは火を見るより明らかですね。

 

後編へ続く)

 

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