ロードバイク トレーニングの科学
ロードバイクの理論を勉強したことないな、と思いながら本屋をふらついていて見つけた本がこちら
“ロードバイク トレーニングの科学”
人体と機材が連動するロードバイクの奥深さを感じたのでご紹介です。
科学、とあるだけに数々の専門家の知見を集めてでき上がった本です。
- フィジカルとメンタルを科学する
- 機材を科学する
- スポーツをデータで分析する
1. フィジカルとメンタルを科学する
人間側のことが書かれています。
解剖学的な話から、メンタルや栄養素の話など主に以下のようなトピックです。
- 筋肉の伸び縮みの仕組み
- 機械の効率と人間の効率の不一致
- ストレスがパフォーマンスに影響する仕組み
- 運動中の血液の状態
- サプリメントの是非
様々なトピックの中で新鮮だったことがこちら。
<膝関節主導と股関節主導>
単語だけ見ても分かりづらいですが、バイクの漕ぎ方には種類があるということです。
膝関節主導は太ももの筋肉を使って漕ぐ方法。
ももを上げて、ペダルを踏み下ろすイメージです。
股関節主導はハムストリングを使って漕ぐ方法。
腹筋で脚を引き上げて、ペダルを後ろに蹴るイメージです。
どちらの漕ぎ方でもペダルは回ります。
いったいどちらが速いのでしょうか。
答えは、スプリントなら膝関節主導、ロングライドなら股関節主導です。
ハムストリングの方が持続力があります。
短距離で勝負することはないので、股関節主導の漕ぎ方を意識して練習するようにしています。
はじめは踏むときに力がこもっていない感じがしましたが、徐々に回す感覚に慣れてきたところです。
まだまだ修行中です。
プロの脚を見たらバキバキなので、結局どちらの筋肉も大事なんでしょうけどね。
主で使う筋肉の意識の問題です。
<ロードレーサーのメンタル>
ロードレーサーは前向きな人が多いらしいです。
そしてその理由が「勝敗に関わる要素が多いから」です。
「展開が」「天候が」「コースが」「機材が」と、自分以外に上手くいかなかった原因を探しやすいから、自分を責めずに済む。だから自転車競技者のメンタルサポートでは、自分自身に原因を求める「ふりかえり」の時間を大切にしています。
あれこれ言い訳がしやすい競技なんですね。
実際僕も、TTバイクとディスクホイールとエアロヘルメットあればあと5km/hくらい速くなるのに、とか思ってしまいます。
気持ち分かります。
だからと言って、コーチが意識的に選手に反省するよう仕向けているとは変な感じです。
ちびっ子か。
今度ロードレーサーに会ったらイジってやろうっと。
2. 機材を科学する
機械側のことも書かれています。
フレーム、ギア、ホイール、タイヤについてあれこれ検証しています。
- フレームの剛性
- フレームの左右非対称性
- 駆動系の抵抗
- オイルの粘性
- ホイールにかかる圧力と空気抵抗
「バイクの全抵抗ののうち、空気抵抗が大部分を占めており、そのうちの7割が人体による空気抵抗」
のような話は聞いたことがありますが、
バイクにかけた力がどこで失われるかを細かく考えたことはありませんでした。
ロスを減らせる対象として知らなかったポイントがこちらです。
<チェーン汚れ>
え、そこ!?って思いましたが、バカにできないロスとなるようです。
200km走行したバイクで150W出力したとき、新品と比べて駆動ロスが3-4%も増大するとのこと。
チェーンとスプロケがぶつかり合った欠片や、磨耗、オイルの添加剤、ほこり、土、砂などがチェーンの汚れとなります。
「汚れたチェーンでレースに出ることは、ほとんど勝負を放棄しているに等しい」とまで書かれています。
なかなか手厳しいですね。
本書ではバイクごと水洗いすることをおすすめしています。
やったことないです。
<アウターギアかインナーギアか>
アウターギアで一番軽くすると、インナーギアで一番重くしたときより軽くなります。
アウターとインナーでは範囲が重なっているということですね。
ということは、アウターギアである程度軽くしたときと、インナーギアである程度重くしたときに、同じくらいの負荷(クランク1回転で同じくらいの距離)になるポイントがあります。
このとき何か違いはあるのでしょうか。
あります。
このときアウターの方が抵抗が小さくなります。
その理由はアウターの方が歯車が大きく、チェーンの屈曲が少ないからです。
代わりに後輪のスプロケは径が小さくなるのですが、アウターとインナーほどの差はありません。
クランクが1回転して進む距離が同じギア設定でも、アウターの方が軽いということです。
僕は特に何も考えずにアウターばかり使っていたので得した気分です。
基本はアウターで、上りがキツいときだけインナーにしましょう。
<ワイドタイヤ>
太めのタイヤがトレンドらしいです。
細めのタイヤ(23c)と太めのタイヤ(25c)ではどちらが抵抗が小さいか検証しています。
僕は「細い方が地面と接する面積が小さいから抵抗が小さい」と思っていました。
直感的にそうではないですか。
しかし、同じ空気圧の場合、接地面積はほとんど同じようです。
そうか引き分けか、と思いきや、細いタイヤは接地面が細長くなります。
そうするとタイヤの変形が大きい(ホイールを横から見たときに、細いタイヤの方が真円から大きく潰れてしまう)ため抵抗が大きくなります。
極端言うと、六角形の鉛筆転がすのと、丸いペン転がすのと、どちらが進むかという話です。
細いタイヤは鉛筆です。
それから注入できる空気の量は25cの方が多いです。
空気量が多いと乗り心地が良くなります。
ということで太めタイヤが圧勝でした。
感覚に頼らずに、きちんと測定してみないと分からないものですね。
最近25c買いました。

左:太いタイヤ(25c)、右:細いタイヤ(23c)
3. スポーツをデータで分析する
解析技術が進歩したことによって、体内で何が起こっているか、機材にどんな力が加わっているか、ミクロで見られるようになりました。
これまで経験則で常識になっていたことが全て数字で表せる、ということです。
スポーツの運動の効率をデータで追求できるようになってきています。
その人にとってベストな機材やトレーニング方法を、データで算出できる未来がすぐそこまで来ていると感じます。
スポーツの進歩と科学の進歩、興味深いです。
まとめ
ロードバイクは奥深くて正解が分からないと言ってしまえばそれまでなのですが、
人体、メンタル、機材と分解していくと、それぞれにやるべきことが見えてきます。
ここまで細かい要素を見せられると、自分の改善点は無限に見つかるのでは!と思ってしまいます。
科学ってすごい。
タイムに伸び悩んでいて、改善できる要素を洗い出したい方は手に取ってみてはいかがでしょう。
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